枕の歴史について
枕は夜寝るときに頭をその上に載せて身体を安定させるための器具に過ぎませんが、古くからの歴史を持っていることは確かです。
世界にはさまざまな事例がありますが、たとえば我が国でも古墳時代のものはいくつも出土しています。
もっともこの時代のものは古墳に葬られた被葬者に対して使用した事例といえますので、実際の生活の用途にまで幅広く利用されていたのかどうかはわかりません。
それでも石製のものや土製のもの、琥珀のような宝石を使ったものまでバリエーションがあり、頭が直接載る部分には円形の切り込みやくぼみが入っているようなものまであって、当時の人々の思いのほどがうかがわれます。
これら古墳時代よりは時代が下るものの、江戸時代以前に実際に生活上で使われた枕の場合は、当時は髷を結い上げるのが一般的だったため、その形状を崩さないような箱型のものが多く用いられていました。
旅先に出るのに携帯するような場合は特にそうですが、箱には小さな引き出しが付いていて、いろいろな物や金品なども収納することができる便利なアイテムのひとつだったことも確かです。
もっとも現在では髪型もより自由になっていることとあわせて、寝やすさ・快適性・健康志向などにも支えられて、かつてのように無駄に高さがあって固めの枕は主流ではなくなり、さまざまな形状や固さをもつものがあらわれてきています。
そのもの自体がある程度の固さをもっている場合と、内部に詰め物をしているために固さが保たれている場合の両方がありますので、材質によっても種類を考えることができます。
素材ごとに使用感やメンテナンス法が異なる
たとえばウレタンを素材としているものは、素材そのもののクッション性が抜群であり、頭を載せたときにもその形状に自然にフィットするのが特徴です。
その意味では固いだけのものとは違って使い心地はよいといえますが、湿気を溜め込んで放出しないというデメリットもありますので、適当な間隔で干して湿気を抜いておくなどのメンテナンスもしておいたほうがよいといえます。
綿を詰め物としているものは、柔らかさにおいては他の素材を凌ぐ性能を持っています。
もっとも天然素材100パーセントのコットンというのは現在では稀になっており、ポリエステルやソロテックスなどのいわゆる化学繊維が用いられるのが普通です。
そのため天然素材の欠点を補って、単に柔らかいというだけではなく、適度な弾力や家庭の洗濯機でも丸洗いできるだけの耐久性やメンテナンス性、通気性なども獲得しています。
最近は健康志向とあわせて、あえて天然素材、オーガニック素材を利用しているものも見られますが、メンテナンス性などの観点からは化学繊維のほうが勝っている部分がありますので、好みが分かれるところです。
他の詰め物系の製品では、パイプ素材を内部に詰め込んだものは耐久性や通気性、弾力性などの面で優れています。
こちらも洗濯機での丸洗いは可能であり、メンテナンスもしやすく、価格も安いので一般によく用いられます。
手荒な使い方をしなければ5年程度は長持ちしますので、コストパフォーマンスとしては他の追随を許さない面があります。
そば殻素材が詰め物の場合も伝統的にもよく知られており、ある程度の固さを保ち安定性に富み、型崩れがしにくいというのが特徴です。
特に触ったときの冷涼感があるため、夏場のアイテムとしては優れた面がありますが、天日干しをするなどのメンテナンスによって湿気は取り除いておくことが必要です。
自然に立っているときの姿勢を横向きにしたものと考える
このように素材によってさまざまな特徴を持つ枕は、選び方についても個人に合った工夫をしておくのがよいでしょう。
基本的に寝たときに快適とされる姿勢も、自然に立っているときの姿勢を横向きにしたものと考えればよく、首筋のカーブになっている部分と敷き布団との間の空白をいかに埋めるかが枕の真骨頂といえます。
反対に上手にこのすき間が埋められなければ、寝ている間に首に過度の負担がかかってしまい、頭痛や肩こりといった身体的な影響に波及することもあり得ます。
そこで頭を軽く載せるのではなく、肩に近い部分まで深めに、後頭部までしっかりと載せて体重を支えるイメージで使用することを前提として、首や頭の形状に見合った枕を選ぶことが重要です。
この選び方は簡単なようでいてなかなか難しく、高すぎると頚椎の部分が圧迫されて首筋の凝りにつながりやすく、逆に低すぎても頭を載せたときに不安定でやはり首への負担となります。
パイプなどのありふれた素材の場合には、内部の詰め物の一部を取り去って高さを調整できるようになっているものもありますので、このような製品を購入して試行錯誤してみるのもひとつの方法です。
快適性を保つ意味では使用中のメンテナンスも重要ですので、上にカバーをかけてそのカバーをこまめに洗濯するようにしたり、本体も陰干しをして湿気を逃がすなどといった工夫が求められます。
また丸洗いが可能とはいっても、内部の詰め物はこぼれやすいため、洗濯用ネットを使って保護することは必要です。
※枕選び方高さより一部抜粋
最終更新日 2025年7月29日 by teighj