オキシトシンについて
オキシトシンは近年になってその存在が注目されているホルモンの一つです。
かつては女性が出産する際に分泌されることから女性に特有のホルモンであると考えられていましたが、研究が進むにつれて出産以外にも人間の行動について関連が深いことが分かってきました。
特に医学会、行動を研究する心理学者、脳科学者、脳神経学者、人間行動学者などから注目を集め、一般の人にも認知されるようになりました。
女性に多くその存在が確認されるホルモンではありますが、男性に存在しないのではなく、それどころか存在を無視出来ない程の役割を果たしています。
男性に多く見受けられるテストステロンが男性に特有のものではなく、女性にも存在し行動を左右しているのと似ています。
それぞれ分泌量は男女で差が見られるものの人間の行動に関わっている点では共通しています。
特に注目されているのは他人や動物と関わる際にこのホルモンが分泌されるという点です。
人が他人に愛情を感じて他人の身体に触れると多く分泌されます。
また、好きな動物に触れた際も分泌が確認されます。
触れた相手に愛情・愛着をもって接すると分泌されることから人間が愛情を感じる際に分泌されるのではないかということが注目されています。
のため、オキシトシンは絆ホルモンだとか愛情ホルモンなどと言い換えて表現されることがあります。
触れられた側も愛情を感じると分泌が促されます。
これは人間の女性男性だけでなく、触れられた側の動物にも当てはまります。
オキシトシンの科学的な影響
ただし、全ての動物という訳ではなく、基本的には人間と友好な関係のある動物に限られるようです。
例えば、かねてから人間に飼われてきた犬や猫は愛情を感じている飼い主に触れられると分泌されます。
人間と友好的でないヘビや昆虫などでは分泌されません。
触られると嫌悪感を感じるような相手では分泌はされないということです。
人間同士でもこれは当てはまります。
相手が好意をもって触れてくれば相手は分泌されるかも知れませんが、触れられた側が触れてきた相手に嫌悪感を抱いているなら分泌されないということになります。
女性はよく、女性同士で手をつないでいますね。
大人になるとあまり見かけませんが、高校くらいまでの児童生徒たちではしばしば女性同士で手をつないでいます。
これは、もともとオキシトシンの量が男性より多く絆や愛情を感じやすいためではないかと考えられます。
また、オキシトシンは愛情を感じたときに分泌される役割を果たすだけではなく、人間の共感に大きなかかわりを持っているのではないかという点も着目されていまして研究が進められています。
共感の定義については学説も見解が分かれているのですが、あえて辞書的な定義に従うなら「他人と喜怒哀楽などの感情を共有する感覚」となります。
共感する能力については個人差があるのですが、一般的に男性より女性の方が高いことが分かっています。
ある実験によれば、裏切り者が罰を受けているシーンを男性と女性に見せた場合、男性の共感を司る脳の反応部位は全くといってよいほど反応しないのに対して、女性の共感を司る脳の反応部位は少なからず反応したということです。
自閉症とオキシトシン
もちろん個人差はあって男性でも活発に反応する人、女性でもあまり反応しない人というのも見受けられます。
しかし、この事例からいって一般的に女性は男性より共感能力が高いといえそうです。
そして、古来より他人の表情を読み取るのが苦手な人というのはいたようですが、現代でも少なからず他人の表情を読み取れない人がいます。
発達障害の一つである自閉症という症状の名称は多くの方がご存知なのではないでしょうか。
この自閉症とオキシトシンとが関連しているのではないかと考えられています。
自閉症の定義についても見解が分かれているのですが、ある見解によれば概ね男性の方が女性より自閉症児は多く、見方によっては9割以上が男児だとも言われています。
分泌量が極端に少ないと自閉症になってしまうものと考えられています。
また、ある研究によれば、オキシトシンを自閉症児に投与すると自閉症の症状が緩和され、表情を読み取る能力が高まり表情も豊かになったそうです。
このような結果を踏まえ東京大学附属病院をはじめとして多くの研究チームによって研究開発が進められています。
経鼻スプレーを投与したりすることによって自閉症の症状が緩和したり、分泌量の少ない人が使用することによって他人の感情を理解できるようになるなどの効果が期待されています。
また、サイコパスという自分の利益を常に最大化するように行動して他人の立場は全くと言っていいほど考慮に入れないで行動する人の存在が耳目を集めていますが、このサイコパスと共感能力が関係しているとも考えられています。
連続殺人事件の犯人は共感を示す脳の部位が全く反応しないとの研究もあります。
自閉症が緩和されるだけでなく、サイコパスといった社会の病理についても緩和し解決に向かいよりよい社会が実現するといいですね。
最終更新日 2025年7月29日 by teighj